日本やアメリカなど局地的ではなく、世界中で経済格差が叫ばれています。
「絶望死(自殺、アルコール、薬物での死)」
「ユニセフ」の公式サイトでは「世界の最も豊かな1%の人が、世界の富の33%を保有する」という現状が指摘されています。
SDGsの目標の一つに「2030年までに、年齢、性別、障がい、人種、民族、生まれ、宗教、経済状態などにかかわらず、すべての人が、能力を高め、社会的、経済的、政治的に取り残されないようにすすめる。」とありますが、先進国と発展途上国という“生まれ”がまず一番大きなところでしょう。紛争地域などと比較すれば、日本に生まれた私たちはそれだけで大変に幸運と言えるはずです。
ただ、先進国内での格差も深刻です。米国では移民を受け入れるなどグローバリゼーションの悪影響をダイレクトに受けた白人労働者階級の「絶望死(自殺、アルコール、薬物での死)」が増加し、国内で唯一平均寿命が下がっているとして注目を浴びています。また、極端な実力(能力)主義により、失敗や貧困が努力しなかった(できなかった)結果という自己責任論が強い社会構造が、格差を増大させているという指摘も。
教育などは生まれた環境の運が大きい部分もあるだけに、実際に起きている現実と「努力こそ正義」という社会通念の矛盾が格差を引き起こしているということです。日本でもこの状況自体は大差がありません。
成功する人は(例えばコロナ禍の株高などで)ますます成功の階段を上り、貧しい人たちは恩恵を受けられないまま、ますます貧しくなる……資本主義はそういうものだと言われてしまえばそれまでですが、貧困がどんどん拡大すれば社会はどんどん崩壊してしまうはずです。
「お金では幸せになれない」の真実
一方で「お金では幸せになれない」という意見もあります。確かに幸福度を調査すると、世界でもだいたい年収700万円〜800万円までは喜びを感じますが、それ以上収入が伸びても幸福度は上昇しないという結果も出ています(限界効用)。
前述した「世界の最も豊かな1%」の中にいる世界的企業の創業者・CEOの行動からも、お金に対する考え方を知ることができます。
マイクロソフト創業者で元CEOのビル・ゲイツは、巨額の資産の多くを『ビル&メリンダ・ゲイツ財団』に入れ、貧困や感染症撲滅など社会福祉に投じています。Amazon創業者のジェフ・ベゾスやテスラモーターズのイーロン・マスクは、宇宙事業に多額の出資をしています。
寄付や未来への投資(そこに節税などさまざまな意図があるにせよ)などによる幸福度の上昇、必要以上の金をかたくなに守ることの意味のなさ、極めて賢い彼らは知っているということです。
ただ、彼らは世界有数のお金持ち。圧倒的なビリオネアであり、彼らの存在が国内どころか世界でも大きすぎる格差を生んでいるのも事実で、実力主義の象徴的な人々とも言えるでしょう。
「年収700万円〜800万円までは喜びが上昇する」と前述しましたが、この収入を聞いて現実感を持てる日本人がどれだけいるでしょうか。その一方で超富裕層は多かれ少なかれ寄付や慈善活動で幸福度を増大させています。
お金そのものの格差もありますが、収入を得られる“見込み”や“期待感”の格差はそれ以上と言えるのではないでしょうか。
(文/田中陽太郎)