悲しいことですが、女性が予期せぬ妊娠で、誰にも話せず中絶することもできず、子どもを産んですぐ殺めてしまったり、死産で遺棄して逮捕されたり……、ということが、日本ではときどき起きています。
10代後半から20代がホルモンが高い
表沙汰になっていないものも含めると、もしかしたらかなり多いかもしれません。
晩婚化が進み、1人目の子どもを産むのが30代、というのは決して今の日本では珍しい話ではありません。中には40代で第1子を産む、という人もいます。
亀山早苗さんの著書「人はなぜ不倫をするのか」(SBクリエイティブ)で、「生物的にヒトを見ると10代後半から20代が男女ともにホルモンが最も高く、性衝動が一番強い時期で、このころに子をなすことが生物的には正しいと言えるでしょう」と語るのは産婦人科医の宋美玄さん。
しかし、「学習指導要領では高校生はセックスをすべきではないとされています。学校では性教育も行われていますが、それ以前の性衝動や恋愛感情まで踏み込んだ教育は行われていません」とも語っています。
これが今の日本の実情だということは、制度や教育が生物学的なヒトとの体に合っていない、ということになります。「高校生は、性に一番興味がある時期のため、恋愛もすればセックスもします。でも、日本は国がそれを認めようとしないからおかしなことが起こるのです」と宋さん。
確かに日本では性教育について、どこかタブー視されていると言っても過言ではありません。親子でセックスや避妊について語るなんて絶対無理、という家庭がほとんどでしょう。
逮捕されるのは常に女性
さらに学校での性教育の授業も、多感な時期の高校生からすると、それなりにもう知識がある性について「わざわざクラスみんなで、セックスも含めた性教育の授業をする」という状況はかなり気まずく感じるでしょう。
教室内はなんともいえない空気が漂い、「一刻も早く終わってほしい」と願っている生徒も多いかもしれません。
ただ、宋さんのいうような踏み込んだ教育ではないにしろ、予期せぬ妊娠は女性へのリスクの方が大きいのは確かで、想定外の妊娠では中絶という選択もせざるを得ない場合があります。
しかし、それには相応のリスクがある、ということは日本の今の性教育でもきちんと教えられますし、このことを知っておくことは、気まずい性教育の授業とはいえ、男女ともにとても大事なことです。
そもそもの大前提として、妊娠は一人ではできないということです。しかし、冒頭で語った悲しい“事件”の“容疑者”として逮捕されるのは常に女性です。
もっと改革が必要
少し前までは「赤ちゃんを殺すなんてなんてひどいことを」と、その“実行犯”である女性を責める風潮がありました。しかし最近ではネット上のコメントでも「相手の男性はどうした?」「なんで女性だけが逮捕されるの?」と、その女性を妊娠させた男性を糾弾する声も多くなってきているように感じます。
そういう意味では、日本の社会には少しずつ良い変化が訪れてきているのかもしれません。
ただ、こういった事件について、「女性が逮捕されました」までの報道しかされず、具体的に相手の男性はどうなったのかまでは報道されないというケースがほとんどです。
このような予期せぬ妊娠が引き起こす悲しい事件については、宋さんの語るような性衝動やセックスそのもの、恋愛感情まで踏み込んだ性教育の実施だけでなく、法的な面からも、日本はもっと改革が必要なところまできているのではないでしょうか。
(文/豊橋昭子)