一般人だろうと芸能人だろうと、こじれた恋愛関係の末路として相手に危害を加えたり、自分を傷つけてしまったりというトラブルがよく報じられます。
未練と執着
監禁や軟禁といった事件をはじめ、暴行事件や、時には相手を死に至らしめるなど悲惨な事件も多く、はたから見ると「なぜそんなことをしてしまったのだろう」、「そんなことをしても相手の気持ちは戻らないのに……」と疑問に思うことも少なくありません。
また、相手の気を引きたいがために自傷行為に走る人も一定数おり、周りの心優しい人間が巻き込まれてしまうトラブルや、場合によっては無理心中という悲惨な結末を迎えてしまうこともあります。
相手への未練と執着がそうさせてしまうのでしょうが、「そこまでできるなら、人生をやり直すことにエネルギーを使えばよかったのでは?」と思うほど、恋愛のパワーに凄まじさを感じます。
「未練とは心残りであり、まだ恋愛感情が残っている証拠。執着の正体は依存心や恨み、または後悔、罪悪感といった心の傷です。これらの度合いが大きいほど感情のふれ幅も大きくなり、喪失感が一層強く感じられます」と、心理学者・齋藤勇さんの著書『男女がうまくいく 心理学辞典』(朝日新聞出版)の中に記されています。
暴行事件や自傷行為とまではいかなくとも、別れた相手にいつまでも付きまとうストーキング行為や、相手のSNSを随時チェックして「今は何をしているのだろうか」「新しい恋人はできたのだろうか」などといつも気にしてしまう、無気力状態となり1日中家の中に閉じこもってしまうなど、おかしなことをしてしまう可能性は誰にでもあるのです。
しかし、人は忘れようとすればするほど思い出してしまいます。では、一体どうしたらいいのでしょうか。
「現実逃避」
齋藤さんは「その人について考える頻度を減らせば苦しまずに済む」とアドバイスしています。それは言ってしまえば「現実逃避」。
仕事を忙しくするもよし、ツイッターでつぶやきまくるのもよし、トレーニングジムに通ってひたすら肉体を鍛えるもよし。失恋相手とは全く関係のない事柄や場所で何かに打ち込み、終わった恋のことを考える暇をなくすことが効果的です。
ここで注意しなければいけないのは、相手のことを思い出すような場所、例えば二人でよく遊びにいった場所や、二人の共通の趣味などは除外することです。できればこれまで未経験のものがよいでしょう。
周りからすれば悲しい現実逃避に見えるかもしれません。ですが、これは自分の心と未来を守るための“賢い”現実逃避といえるでしょう。
友達に愚痴を吐くのも効果的ですが、とことん紙に書き出すだけでも感情を出し切ることができ、誰にも迷惑をかけないのでよい方法です。
絶対にやってはいけないこと
自分自身の中にある感情や想いを顕在化させ、心残りや心の傷をなるべく表に出すことで減らしていくことが立ち直る秘訣というわけです。
しかし、絶対にやってはいけないことがあります。
それは、「終わった恋を考えないようにしよう」と思うことです。何事も、考えないようにすればするほど人間は考えてしまうもの。別のことで頭をいっぱいにすることで、必然的に考えないようになるという方法をとるのが、失恋からの賢い脱し方です。
そういう意味では、新しい恋を始めるとその相手のことで頭がいっぱいになるので、いちばん効果的かもしれません。
(文/田中陽太郎)