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確率のワナ「1/100の確率」でも100回失敗するかもしれない「クジ」とは

発行責任者 (K.ono)

 多くの人が何かを選択する際、よく利用するのが「確率」や「統計」です。

確率加重関数と「スマホのガチャ」

 成功する確率が何%、うまくいかない可能性が何割……過去の統計を見ることで、今自分がしようとしていることが正しいのか間違っているのか、客観的な数字で判断するのは有用と言えるでしょう。

 ただ、出てきた数字をそのまま信じ、実行できるほど人間は単純ではありません。例えば「飛行機が墜落する確率」は100万分の1と言われていますが「わずかでもある墜落確率」を人間は多く見積もるものです。「この手術は99%成功します」と言われると、残る1%の失敗可能性を重く考えてしまうのです(確率加重関数)。ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンが提唱する「プロスペクト理論」の一つとして有名です。

 また、何かしらサービスを利用する際、サービスを提供する側がこうした確率を使った「マジック」でユーザーを誘導することもあります。

 代表的な例が「スマホのガチャ」です。

 ガチャは形上、町内会のお祭りやるような「福引」に近いものですが、その実態まるで違います。福引であれば「100枚に1枚の確率で、ハワイ旅行が当たります」とあれば、それは確率が1/100となり「100回引けば1回は当たる可能性は非常に高い」となります。

 一方「ガチャは1%で超レアキャラが当たる」となるとどうでしょうか。一見福引と同じ1/100であるように思われます。100回ガチャを引けば1回は当たると考えがちですが……。

100回引いても外てしまう

 福引とガチャの違いは「中身が減らない」という点です。福引は1回引くごとにくじの絶対数が減りますが、スマホゲームのガチャは実数が減少しません。つまり、何回引こうとも99/100は外れることになってしまいます。仮に計算した場合「99/100の100乗」となり、外れる確率は36.6%。約3人に1人は100回引いても外てしまうことになります

 一時期このガチャが社会問題になったことがありましたが、単純に「100回やれば1回当たる」と邁進するのは危険ということです。世の中にはこういった数字のマジックを使ったマーケティングが溢れています

 確率や統計の使い方は場合によっては専門的で非常に巧妙なものもあります。しかし、もっと単純なものもあります

 例えば化粧品の広告で「使った人の90%が効果を実感!」という文句があったとしましょう。ただ、これだけではサンプル数が明確ではありませんし、仮にそのサンプルが20人程度だったとしたら、サンプル数が少なすぎます。もしかしたら「Aグループ20人」「Bグループ20人」など複数のグループがあり、その中で90%効果を実感したグループの例だけを紹介している可能性もあります。もちろんこれは詐欺的で極端な例ですが、そうした細かなテクニックはいくらでもあるのです。

 巷にある数字に惑わされず、俯瞰して考え、その上で選択することが、余計な買い物や失敗を減らせる方法と言えるかもしれません。
(文/藤沢修郎)