社会

世界富裕層500万人超増加…拡がる格差の元凶は「平和」革命や戦争なき世界で

発行責任者 (K.ono)

 世界中を覆った新型コロナウィルスの蔓延は、いまだ完全な収束には至っていません。

世界で500万人超の富裕層が増加

 世界が元通りになるのはいつか……という声がありますが、そもそも元には戻らないという声もあります。国ピンポイントではなく世界を同時に機能不全にしたコロナの威力はそれだけ大きかったということです。

 そして、先進国では「経済格差」の拡がりも指摘されています。コロナの打撃により多くの人が仕事への不安や収入減少、失業の恐れを抱く中、株や不動産を保有する富裕層は利益を上昇させています。スイス第2の金融機関クレディ・スイスの2021年版「グローバルウェルスレポート」は「2020年の富の創出は、世界が直面している課題とはほぼ無縁だった」とし、株式と住宅価格の上昇という恩恵を指摘しています。昨年は世界中で500万人超の富裕層(純資産100万ドル超)が増加したとしています。

 こうした分断は資本主義によって起こることで「あまりにも理不尽だ」という意見もあるかもしれませんが、株式市場という積極的に投資できる、あるいは投資してもらえる仕組み(それがなければ融資などリスクの高い借金をするしかなくなる)がなければ、所得が増え、今の便利かつ進歩的な世の中は実現していません。パソコンもスマートフォンも電気自動車もネット通販も高度な医療や薬品開発も実現は極めて難しいでしょう。そう考えると、資本主義をただ批判することはできません。

 とはいえ、日本でも生活困窮者と資本家の格差は開いており、それが問題であることに違いはありません。是正するための策についてはさまざま議論されていますが、歴史的に見た「残酷な結論」を、作家の橘玲氏が紹介しています。

「平等をもたらす四騎士」

 橘氏は著書『無理ゲー社会』(小学館)にて、世界に「平等をもたらす四騎士」を紹介しています。米の歴史学者ウォルター・シャイデルによれば、その四騎士とは「戦争」「革命」「(統治の)崩壊」「疫病」であり、ようは「とてつもないヒドいこと」が起こると世界は平等になるというのです。

 これまでの価値観や社会システムをひっくり返すような悪い出来事が起こることで世界が「リセット」され、平等が形づくられる……日本に置き換えれば、70年以上続く「戦後の平和」こそが、平等にならない最大の要因ということです。

 現在のコロナ禍というのは、シャイデルが語るところの「疫病」には入りそうですが、世界的に見れば過去のペストやスペイン風邪と比較すると極めて弱毒で、全体的にはすぐさま死に直結するようなものではありません。コロナは現在の社会を根底から破壊する力はなく、末端労働者の生活が揺さぶれる一方、外に出られない富裕層の貯蓄が増え、株価も上昇する結果に至ります。

 日本においては超高齢化、ならびに人生100年時代と言われるほどの長寿化によって、経済的な不平等や貧困増加の深刻度がさらに大きなものになってしまいます。人生を50年生きてもまだ50年あり、さらに80~90歳の親がまだいて面倒を見る(あるいは見られる)状況ということです。

 国全体でも高齢者を支える現役世代の数が減少するため、年金も20年後には今と比較して確実に減少します。そんな中で格差が拡大し続ければ、八方ふさがりになる人や世帯が激増するのは確実です。あまりにも厳しい人生が長く続くことに、特に多くの若者はため息を漏らすのではないでしょうか。

 日本含め世界の多くの国で実現した平和こそが格差の原因となり、その是正にはとてつもない悪事が必要になる……幸福を享受するには極めて厳しい時代に突入しているのは間違いありません。
(文/谷口譲二)