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専門家コメンテーターを信じるな?「万に一つの予測的中」でカリスマになれちゃう構図

発行責任者 (K.ono)

 新型コロナウィルスの蔓延により世界中がいまだ大きなパニックの中にあったこの数年ですが、日本も同じく医療や経済、政治などさまざまな観点で議論が巻き起こっています。

「専門家コメンテーター」は増殖

 そうした中で必ずメディアに登場するのが、さまざまな「専門家」です。政治評論家やメディアに詳しい人物、経済学者にコロナで打撃を受けた個々の業界のベテラン経営者などなど。いわゆる「専門家コメンテーター」の数は増殖を続けており、決して減ることはありません。

 テレビのワイドショーやニュース番組に出演するのは専門家の人にとって非常に割のいいアルバイトでしょうし、出演したいと思う人は多いはずです。番組の席の数が決まっていることを考えれば、その争いは熾烈に違いありません。

 ただ、そうした争いに勝利しメディア出演する専門家の意見が必ずしも正しいかといえば、決してそんなことはないでしょう。むしろ彼らの未来予測や予言の大概は外れているのです。

 スイスの作家ロルフ・ドベリ氏の著書『Think right』(サンマーク出版)では、専門家の予測がいかにアテにならないモノかに関する記述があります。

 同著ではカリフォルニア大学バークレー校のフィリップ・テトロック教授の研究が紹介されています。合計284人の専門家の8万以上の予測を10年にわたって調べ上げた結果、ほとんどの予測が外れていたということがわかったようです。また、テレビなどに出るような有名な専門家ほど劣った結果になったとしています。

万に一つの「的中」に吸い寄せられる

 例えば金融関係の専門家の未来予測が当たるのなら、その人たちは数回予測が当たるだけでビリオネアになるはずです。しかし、専門家はいつまでも専門家としてメディアに出演を続けているか、どこかの組織に属したままです。

 メディアに出る専門家というのは、基本的に番組の流れを見てもっともらしいことを語る印象があり、その発言に何ら責任を持つ必要がないのが大きな問題でしょう。責任がないからこそ、やや弛緩した感覚で発言ができてしまうのです。

 一方で、メディアなどの発言は影響力が非常に強く、視聴者のほぼすべてといえる一般市民を揺さぶります。テレビでなくとも、セミナーや本で投資の専門家の言葉を鵜呑みにして大損した人は枚挙に暇がありません。

 今のコロナ禍や為替相場などは非常に複雑であり、基本的には予測不可能なものです。専門家は数多く語った予測の一つが当たるとニヤリと笑い、メディアも「予言者」として祀り上げます。しかし、それ以外の「大部分の外れた予測」がある可能性は極めて高いということがわかります。

 専門家や専門紙の社会に関する複雑な予測は基本的には疑うべき――コロナ禍が終わる時、多くの専門家が語っていた予測と現実を照らし合わせてみるのも面白いかもしれません。
(文/谷口譲二)