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ホリエモンは全否定?「FIRE」の最短距離とは…「60年も70年も働くなんて」

発行責任者 (K.ono)

 ここ2年ほどの間に、社会では「FIRE」という考え方が浸透しています。

「60年も70年も働くなんて」と言う気持ち

 FIREとは「Financial Independence, Retire Early」の頭文字であり、早いうちに大金を稼いで経済的な自由を得ることで、仕事を早期リタイアするというアメリカ発祥の考え方です。

 働き方が多様化し、それに伴い個人それぞれの生き方、幸せの定義も大きく変わってきました。昭和、平成までは「サラリーマンとして生活基盤を作り、安定的な人生を送る」ことが一般的なモデルとされてきましたが、日本経済の停滞が長期化し終身雇用という幻想が崩壊、個人の所得がなかなか増えない状況などから、ステレオタイプな生き方への疑問が増えるのは必然といえるかもしれません。「60年も70年も働くなんて」と言う気持ちが拡がっているのです。

 また、格差社会ということもあって、投機などで若くして大金を手にし経済的自由を得る人も増えています。そうした人々がSNSで情報発信することで憧れの対象となることも現在は多いです。FIREへの憧れも似たようなものといえるかもしれません。

 ただ「若いうちに大金を稼いでリタイアする」と口にするのは簡単ですが、いうまでもなく現実はそう甘くはありません。「楽して儲かる」なんて話は、まず転がっていないものと考えたほうがいいでしょう。

 ベストセラー『ビジネスエリートになるための教養としての投資』(ダイヤモンド社)の著者である農林中金バリューインベストメンツCIO奥野一成氏は、子どもたちにも早い段階でのマネー教育をするべきだと主張しています。

買った株式を売らない?

 日本の教育には「楽して儲かることはない」というアナウンスが不足していると奥野氏は指摘しています。少年、少女時代からマネー教育を受けないことから、無理な投機や詐欺で大損をする人が後を絶たないというのです。

 株のデイトレードやFX、仮想通貨などは、確かに一攫千金の要素があり、100万円を元手に数億円にしたという人もいるでしょう。

 しかし一攫千金の裏はまさに死屍累々です。多くの人が派手に負け、勝てるのは1割程度です。その1割の中で億単位で儲けるのもごく一部でしょう。もはやそれはギャンブルと同等です。

 奥野氏は同書で「買った株式を売らず、長期保有して継続的に利益を得る投資」を推奨していますが、日本においてよく取り上げられる投資は正確には「投機」が多く、そのあたりの区別が曖昧であると指摘しています。

 投資は本来長期的なものであり、それは会社員や事業者の仕事と同じく、根気や努力、考え続ける気概が必要ということです。刹那的なギャンブル性の高い投機とはまったく異なることを、まず認識しなくてはならないということでしょう。

 普通に会社員を続けてFIREを達成することは極めて難しいでしょう。しかし、誰もが退職して起業を選択できるわけではありません。となると、FIRE達成のために思いつくのは投資ということになります。

 ただ、投資と投機の違いをしっかり認識し、その上で判断をしなければ足元をすくわれるリスクは高いということです。

 ちなみに実業家の堀江貴文氏などは「FIREなんてボケまっしぐら」と語り、経済評論家の山崎元氏は「みんなそんなに仕事つまらないのかな……」とも。価値観はそれぞれであります。
(文/谷口譲二)