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「高年収サラリーマンのススメ」新卒採用未だ最強、楽して儲けるは幻想か

発行責任者 (K.ono)

 昨年7月、東京商工リサーチが上場企業の2020年度(2020年4月期~2021年3月期)決算における平均年間給与を調査し、その結果を出した。

「トップサラリーマン」の年収

 平均年収が高い会社は不動産業のヒューリック、三菱商事、伊藤忠商事、三井物産、住友商事など名だたる有名企業が並ぶ。今記した会社が、だいたい「平均年収1500万円」のいわゆる「トップサラリーマン」の会社といえる。

 不動産や証券会社の場合は景気によって社員の収入が変動が大きく上下することも多い。1位の不動産業ヒューリックも「年収の賞与割合が大きい」という現場のコメントも存在している。

 ライフプランを考える上で、年収はやはり重要だ。収入が上がる分税金も高いため、仮に年収1500万円以上に到達しても「想像したほどリッチではない」と思う人も実は多いが、自分自身の満足や自信、達成感を得るという意味でも重要な指標とはいえるかもしれない。

 また、平均年収が高いだけでは、本当の意味での「実態」は見えないという声も少なくない。

「上場企業で特段ブラックなイメージのない企業の場合、だいたい42.3歳前後が平均“年齢”になります。

しかし『高収入企業ランキング』などの最上位常連である日本M&Aセンターなど、平均年齢が30代半ば程度という企業も。同社も平均年収は1400万円近いですが、やはりM&A業界は激務とイコール。高収入を得るために尋常ならざる仕事量をこなす必要のある会社も少なくありません。

平均年齢がすべてではありませんが、同じく(むしろ上記企業たち以上の)超高収入企業であるキーエンスも平均年齢は30代中盤でここ10年近くは推移しています。そういう意味では、年収1000万円超で平均年齢が40代前半がほとんどの大手商社数社は、やはり優良企業といえるかもしれないですね。就活生にとっては超難関ですし、優秀な人物も多いので現場の競争は激しいですが……。

また『何歳でいくらくらいもらえるのか』『若いうちから高収入なのか』というのも、意外と企業によって異なります。とある地方銀行だと、10年務めて階級が上がるまでは収入が低いというところもあるようです」(メディア記者)

「新卒の力」は未だ圧倒的

 世の中カネがすべてじゃない! とはいえ、金銭が実生活余裕を与えてくれるのもまた現実である。収入が安定するだけで人生の選択肢も広がるのは間違いないだろう。「お金なんかどうでもいい」という気持ちに本当の意味でなれるのは、残念ながら金持ち(サラリーマンの時点で金持ちにはなれない、などの論理は無視して)だけである。

 日本人の大多数がサラリーマンになる世の中を考えると、上記から導き出される結論は「大学を出ること、新卒採用という立場での就職活動をがんばること」が極めて重要であることがうかがえる。ここまで出てきた企業の多くに転職で入るというのは、他社で相当な実績を積んでいない限り極めて難易度が高いからだ。転職市場が活況な今も「新卒の力」というのは未だ圧倒的に大きい。

 また、少なくとも「高収入で楽」という会社はほぼ幻想の中にしか存在しないということを認識すべきだろう。激務の中で超高収入を得ても、思いのほか幸福度が低い人や、精神疾患を患う人も決して少なくはない。もし読者の方で「(主観ではあるが)仕事もそこそこ、給与もそこそこ、何か物足りない」などと思っている人がいれば、それが実は企業として「自分にとってちょうどいい、妥当な状況」といえるかもしれないということだ。金銭面だけで就職や転職をすると失敗する、という意見が多いのもこうした側面があるからだろう。

 それでも、何もかもかなぐり捨てて「カネ」を追い求めるなら、やはりある程度「ソルジャー」になる覚悟は必要なのかもしれない。そしてそれが幸福とつながるかが、もっとも重要なことだ。
(文/谷口譲二)