思考

消えない不安は「紙に書く」で解決?簡単な「エクスプレッシブ・ライティング」

発行責任者 (K.ono)

 さまざまな出来事や状況に対して不安を覚えることがあるでしょう。特に新型コロナウイルス感染症が世界的に流行し始めたときには、多くの人にとって未知の病であり、生活もかなり制限され、一時的にかなりの不安を抱えたのではないでしょうか。

不安感を和らげる「簡単な方法」

 コロナのように、広く認知された“不安のもと”であれば、自分の心境を口にしたりSNSで発信したりしても、「まわりの人にどう思われるだろうか」など、あまり気にすることではなかったかもしれません。

 ところが自分だけが抱えているような不安な出来事というものは、なかなか人に伝えることができないものです。さらに年を重ねると、自分の弱みを見せるということに恥ずかしさを覚えたり、「誰かに迷惑をかけてしまう」と思ったりすることもあるでしょう。

 特に、「他人の目を気にしやすい」とか、「思いやりの気持ちが強い」といわれる日本人は、そういった傾向が強いかもしれません。どんな場面でも強がることで他人からの信頼を得ようとしたり、自分の心を保とうとしたりしがち。そんな心当たりがある人もいるのではないでしょうか。

 しかし、弱みを見せないようにいくら強がったとしても、根本的に不安を解消するということにはなりません。

 脳神経外科医である荘司英彦さんは、自身の著書「科学的に証明された不安にならない36の方法」(笠倉出版社)の中で「不安だと思っていることを紙に書き出すと、それだけで不安感が和らぐことが心理学の実験で明らかにされています」と述べています。

 こういった不安やストレスを書き出すことは「エクスプレッシブ・ライティング」と呼ばれ、科学的にも効果があると証明されている方法なのです。

最低でも4日間続ける

 紙でなくてもPCやスマホのメモ機能でもOKですし、SNSに書き込んでも良いそうですが、できれば文章のうまさや誤字脱字を気にすることなく、ひたすらに書き殴ることができる手書きのノートがより効果的でオススメなのだそうです。

 さらに驚くことに、不安というのは記憶力にも影響しているようなのです。というのも、「『不安になる』こと自体が脳のワーキングメモリ(短期記憶)の容量を消費してしまうから」だと荘司さんは記しています。不安を書き出し、脳の外に出すことによって、その分ワーキングメモリの容量が空くため、脳を効率よく使えるようになるのです。

 大切な試験や就職活動の面接、大きな案件の会議などを控えている人は、このエクスプレッシブ・ライティングを試してみてはどうでしょうか。

「苦手な分野の問題が出たらどうしよう」「偉い人と話すのは緊張する」「資料にミスはなかっただろうか」など、気になっている不安は全部書いてみましょう。

 ほんの些細な不安でもかまいません。自分のノートなら誰かに見られるわけでもないのですから、こんなところで強がる必要はないのです。

 最低でも4日間続けることが大切なのだそうです。慣れてきたら、個人的不安から、一般論に変えていくことで客観的・俯瞰的に自分の出来事を見ることができるようになります。

 書くことで脳から不安を追い出していけば、脳の神経ネットワークもしだいに「ポジティブ回路」に変わり、そもそも不安になりにくい体質になるといいます。

 不安もなくなり、その分、他のことを脳にインプットできるなんて。「つい誰かの前だと強がってしまって相談できない」という人だけに限らず、ひたすらに不安を書き出すことは、メリット尽くしの方法かもしれませんね。
(文/名古屋譲二)