生活

少子化を止める女性の「性欲景気連動説」?シビアな現実と向き合う

発行責任者 (K.ono)

 近年、男性の育休取得も徐々に浸透しつつあります。

男性と同じキャリアまでは…

 育児休暇からの復帰をした女性が時短勤務をしたり、子どもの急な病気でお休みをする、というときでも「また子どものことで早退!?」なんてことは立派なハラスメントであるとともに、言う側の常識が問われる社会になってきました。

 実際に二人の子どもを持つ筆者も、一人目を産んだときより、二人目を産んだときの方がより働きやすくなっている、と社会の変化を感じました。

 とはいえ、女性が社会で働き続け、男性と同じようにキャリアを積めるとまではいっていないのが現状です。

 結婚して子供など産もうものなら、まず保育園を探す“保活”が大変です。子どもが生まれる前から保活を始めるのはもはや当たり前。

 お腹にいる子の預け先を探すため、大きなお腹を抱えて園の見学に奔走した、という人も多いはずです。まだ生まれてもない子どもの預け先を探すという、なんだかちょっと不思議なことが、現代のニッポンではスタンダードとなってしまっているのです。

 子どもを持つ女性の正規雇用での再就職は、決して簡単なことではなく「保活に成功しないと、二度と社会復帰はできない」という危機感すらあるでしょう。仕事では待ち受けるマミートラックの恐怖。仕事が面白くなってくる頃=そろそろ子どもを検討してもいい頃、となるわけですが、乱暴に言えば「出産したらキャリアを取り上げられる」と思うと、なかなか妊娠・出産のタイミングがわからないという女性も少なくありません。

 少子化が叫ばれて幾星霜、「少子化=女性がさっさと子どもを産まないからだ、なんて、女性のせいにされている風潮は、残念ながら未だにあります」と、産婦人科医の宋美玄さんは亀山早苗さんの著書「人はなぜ不倫をするのか」(SBクリエイティブ)で語っています

「性欲景気連動説」

 男性は「60歳でパパに!」なんてニュースもときどきありますが、女性には残念ながら妊娠・出産には年齢の壁が大きく立ちはだかっていることも、少子化が女性のせいにされる理由の一つかもしれません。

「そんな社会構造だから、女性は未婚を選択したり、子どもを産まないまま30代後半になってしまう」と宋さんは嘆きます。

 ちなみに男性は、非正規雇用だと既婚率がグッと下がるのだとか。2020年から始まった新型コロナウイルスの感染拡大による不況の影響は未だに大きく、業界によってはなかなか回復の兆しが見えません。

 こんな現状ですから、当然非正規雇用で働く男性も少なくありません。また、たとえ正規雇用でも給料が低く、いつリストラされるかわからない、という状況では、宋さんによれば「結婚はおろか恋愛どころではないのでは」とのこと。

 そんな宋さんは「性欲景気連動説」を唱えているのだそうです。ちょっとインパクトのあるネーミングですが、「給料が上がって余裕ができれば人は結婚もするし子どもも産む気になる」という考えです

 確かに、子どもを育てるにはお金がかかります。それも、一大決心をしなければいけないような額のお金が。

 となると、経済的余裕がないという理由で「うちは夫婦二人で暮らしていこう」や「一人っ子で十分だね」という選択をする家庭があるのも、なんらおかしなことではないし、ましてや「子どもはまだ?」「兄弟はいるわよ〜」なんて赤の他人から口出しされる筋合いはないことです。

 結婚した女性で子どもを持つことを検討している人がそのタイミングを逃し、結婚したいと思っている男性が非正規雇用で婚期を逃す。社会そのものの課題を、一個人の努力の問題として語るのは愚かの一言でしょう。
(文/豊橋幹子)