娯楽

ディズニーランドは「合理的な社会」がヒットさせている? 非合理な“魔法”のメカニズム

発行責任者 (K.ono)

 日本人にとっての「夢の国」といえば、すぐ思いつくのが東京ディズニーランドでしょう。

 1983年の開園以来、日本のテーマパークの象徴的存在として人気を保持してきました。ディズニーコンテンツやアトラクションの魅力もさることながら、訪れる人がまさに非日常、「夢の国」を感じられる演出やブランドが確立できている点が非常に大きいと言えるでしょう。

「魔法にかかる」といったフレーズ

 しかし、そんなディズニーランドも長引く新型コロナウィルスの猛威の影響を受けざるを得ませんでした。運営するオリエンタルランドの2020年度決算では、テーマパーク事業売上高が約1343億円(前年比65%減)、営業利益は420億円の赤字に転落。休園や人数制限など打撃は非常に大きなものとなりました。

 とはいえコロナ禍が永遠に続くことはありません。パンデミックが収束して通常営業に戻れば一気に客足が戻るに違いありません。それだけディズニーランドのブランド力や求心力の強さに疑いの余地はないでしょう。

 人を虜にしてやまない夢の国……ディズニーランドではよく「魔法にかかる」といったフレーズが使われていますが、実はこの言葉、決して単なる冗談ではありません。

 ディズニーランドなどのテーマパークの世界観や、神秘的な内容超常現象を取り扱う映画やマンガ、あるいは宗教などは、実在という観点では「あり得ないこと」です。超自然的で非合理的、神話的な世界ということです。

 人類は長い年月をかけて進化・進歩を重ねてきました。科学技術の進歩の象徴の一つと言えますが、科学とは事実に基づく合理的なものであり、その発展によって非合理的なものが排除されることとなりました。

脱魔術化の反動

 科学が発展する以前、人類の多くは神秘的なものを信じていましたが、そのカラクリや非合理性が一つずつ証明され、その影響力を弱めていきました。社会学の巨人であるマックス・ヴェーバーはこれを、人が神秘世界から離れるとして「脱魔術化」と表現しています。「神が生物を作った」という神話ではなく「生物進化論」という合理的な研究が説得力を持つのが分かりやすい例でしょうか。

 科学の進歩によって物事や考え方が合理化され、非合理なものの魅力が失われる……それは至極当然という印象があります。

 ただ一方で、ひたすら合理的な世界というのはさすがに息苦しくないでしょうか。合理性だけが横行し脱魔術化が進むことは、利益追求と実現することだけが社会の目的となり、人間の存在意義を与える価値が失われるとヴェーバーは指摘しています。

 人類もそうしたリスクを本能的に感じ取っているのでしょうか。合理化が進めば進むほど、逆に神秘的なものや超常現象的なものに興味が増し、惹かれていくという側面も大いにあるようです。合理性だけで生きているなら、新興宗教や超常現象などに傾倒する人などは出てこないはずです。これをヴェーバーは「再魔術化」と語っています。

 ディズニーランドという夢の国……もちろん大多数のお客さんは「(本当に)夢の国が存在する」とは思ってはいないでしょう。ただ、合理性が高度に発展した世の中で“あり得ない世界”に浸らせてくれるディズニーランドの演出はやはり凄まじい魅力であり、熱烈なファンが大変多いのもうなずけます。

 極めて合理性から離れた魔法の空間……ディズニーランドが今の世の中で廃れる未来は想像がつきません。
(文/加藤宗司)