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「転職は気軽に」元マイクロソフト社長が教える【仕事人生は「9割が運」】

発行責任者 (K.ono)

 多くの会社員、サラリーマンにとって「転職」は今や当たり前の選択肢だ。

 戦後から続く「終身雇用」への疑いが強まり、あのトヨタ自動車ですら経営陣が「終身雇用は守れない」と公に宣言するなど、日本の雇用への考え方も大きく様変わりした。

「理想の転職」

 今ある環境に変化をもたらすこと。もし現在の環境がある程度満足のいくものだと、さまざまな理由から転職を考えても「現状維持バイアス」が働き、転職に成功した時に得られるものよりも、転職に失敗した際に失う部分に視点がフォーカスされ、動けない場合も多い。

 一方で、人の向上心や「今よりいい環境を求めたい」といった気持ちを止めることはできないもの。現在の中小企業は労働時間や収入面のバランスが取れていない場合も多く、別の組織に属そうと考える人は必然的に増えるのも自然である。

 しかし、どうすれば「理想の転職」をすることができるのだろうか。極めて成功例を上昇させることができるのだろうか。

 残念ながら「理想の転職」と気負えば気負うほど、理想からは逃げていくようだ。この件に関し成毛眞氏著『アフターコロナの生存戦略』(KADOKAWA)では、転職に関し率直な意見が述べられている。

 現状の環境がそれなりに良好であればあるほど、転職には慎重に慎重を重ねてしまいがちだ。ただ、そうする中で「転職先では素晴らしい生活が待っている」と理想が膨らんでしまい、大抵は失敗すると同著では記されている。

 成毛氏は「本当は、転職したってしなくたって何も変わらない可能性の方が高い」としている。そして「転職に失敗しても、しれっとまた転職すればいい」とも。つまり、1回の転職で自分の思い描く場所に就ける可能性は低いということだ。

 成毛氏は転職の相談を受けることも多いというが「最後の背中を押してほしい」のだと理解しており、その際は「軽い気持ちで転職したほうがいい」「気軽な気持ちでやったほうが成功する」とアドバイスするようだ。それは無責任というわけではなく、前述のように「重く考え、理想を膨らませるデメリット」を感じているからだ。

仕事人生は「9割が運」

 就職の成功や転職など、仕事人生は「9割が運」と成毛氏は語る。ご本人が札幌の就職先からアスキー、マイクロソフト日本法人社長、そして投資家になるなど流れと運により現在の姿になったことから来ている発言だろう。

 無論、だからといって努力を否定しているわけではないだろう。自身の仕事を誠実に懸命にこなすことと、環境がどんな場であるかは別の問題だからだ。

 就職や転職はあくまでも時々の「スタートライン」に過ぎない。多くの人が「入社することが一つのゴール」になっているからこそ、環境次第で成功、失敗が分かれやすくなってしまう部分もあるのではないだろうか

 どの環境にいても、一定の努力をこなす必要性は変わらないのであれば「転職(そのものは)気軽にしたほうがいい」というのが成毛氏の言葉の真髄なのではないだろうか。

 その上で「仕事人生は運」と断言するのは、言い方を変えれば「謙虚」ということにもつながるだろう。そう考えていれば、成功をしても「自分の実力」とおごり高ぶり、不要な人間関係の軋轢なども避けられる。

 成毛氏の意見は、肩の力を抜き、自身を律することの大切さを説いているように思える。行動はあくまでも軽快で構わず、粘り強く理想を追い求めるのがベターということだろう。
(文/新井銃)