時事

「結婚式の加害性」は日本の協調・相対による不幸。それを回避する「ストア派」の教え

発行責任者 (K.ono)

 SNS上で、唖然とするようなワードがトレンドに上がっています。

 それが「結婚式の加害性」というワードです。

他人が幸せになることで傷つく人の気持ち

 一見すると何のことかわからないような言葉ですが、つまり「他人が幸せになることで傷つく人の気持ちを配慮しろ」「ご祝儀を出させて無理やり祝わせるべきではない」「結婚式で幸せな姿を見せることで病む人がいる」といった、結婚式をする側は周囲に自分たちを見てショックを受ける人がいることを前提にやるべき、という論調です。

 発端は、結婚式に招待される人が同性愛者だった場合には「自分は結婚できない」という悲しみを感じるのではないか、という意見からだったようですが、そこから派生して加害性の議論が巻き起こっているということのようです。

 ネット上では「結婚式の加害性」に関して否定的な言葉が多く「結婚式に加害性があると思うなら、お願いだから新郎新婦の為にも自分の為にも欠席してほしい」「そんなこと言い出したら大学進学は不合格者への加害で、家を建てるのはローンすら組めない人への加害」「加害性を感じるほどにどうしても行きたくないなら欠席すれば良い気がする」「招待状の「ご出席・ご欠席」欄を今まで見て見ぬ振りして生きていらしたの」などなど……。

 人の幸せに傷つく、というのは誰しも大なり小なり経験したことがあるかもしれませんが、大概の人にとって一生に一度の結婚式にまで加害性や強い配慮を求められるというのは、さすがに息苦しさを感じざるを得ません。

「ストア派」が語る「今得ているもの」の重要性

 日本は戦争や紛争、暴動もなく経済的にも安定した国ですが、国連が発表した「世界幸福度ランキング」2021年版で56位。GDP世界第3位の日本は、毎年惨敗を喫しています。

 日本は協調性を美学とする文化があり、その反面「周囲の目を気にする」、つまりは「相対的に自分を評価する」という傾向も強くあります。誰かと自分を比較し、自分が持っていないことを嘆いたり相手に嫉妬したりという側面がより強いとも指摘されているのです。

「結婚式の加害性」もそうした側面の一端と言えるでしょうが、こうした思考に陥らないためには「少なくとも今手にしたものがなかったら、どうなっていたか」という「自分に今ある事実」を見つめることです。

 古代ギリシャ哲学者ゼノンの「ストア派」は2000年前に生まれましたが、その当時から「現在、得ることができていないものより、今得ているものを得られなかった場合のことを考えるべき」という指針を示しています。この言葉は「結婚式の加害性」を考える上でも刺さる言葉ではないでしょうか。

 息苦しくない社会を作るため、人それぞれが寛容になることの重要性を感じずにはいられません。
(文/堂島俊雄)