あなたには友達がいますか?
そう聞けば「yes」と答える人が多数派でしょう。一方で「親友がいるかどうか」という質問では約2割が「no」と回答するデータが、今年5月『羽鳥慎一 モーニングショー』(テレビ朝日系)のアンケートで紹介されています。
橘玲氏の著書『幸福の「資本」論』
友人関係の悩みはなかなか消えるものではありませんが、この普遍的な問題に関し“合理的”なアプローチをしているのが橘玲氏の著書『幸福の「資本」論』(ダイヤモンド社)である。同著では人生を金融資産、人的資本(稼ぐ力や収入)、社会資本(友人など共同体の絆)の「3つの資本」に分け、友人関係は社会資本に分類され、もっとも重要なファクターとしています。
新型コロナウィルスの蔓延とリモートワークの一般化で少し変化はあったものの、現代は東京など大都市圏に人々が集中する時代。都市部というのは変化が目まぐるしくアイデンティティを保つのが難しいという理由から「人間関係の希薄化」が起こるという傾向があります(アーバニズム)。人間関係が薄くなり、親友と呼べる関係を構築しづらい部分はあるでしょう。
一方、地方(田舎)では「マイルドヤンキー」という言葉がありますが、集団を重視し長期にわたり同じメンバーの人間関係が継続する傾向もあります。これは「親友が多くいる」という解釈が可能なようにも思えますが……。
“政治的空間”である場合も
実際には絆が強い分ルールも厳しい“政治的空間”である場合も多く、田舎ということもあって「仮に仲間から外されると楽しいことがなくなる」というリスクも付きまといます。個々の関係性が深いことと親友というのはまた別の解釈ということかもしれません。
現代人は、とりわけ「社会的な外見」を気にするものです。できる限り自分の不都合な部分、弱みを見せず、他人に対し魅力があるように振舞おうとするのが“習性”とすら言えるでしょう。
しかし、少なくとも親友というのは弱みや自分自身の本質をある程度は晒すという側面もあり、だからこそ特別な友人関係を結べる部分もあるはずです。現代人にとって親友づくりというのはそれほど簡単なことではないのかもしれません。
また、親友ほどでないとしても、人間関係や友人関係に煩わしさや悩みを抱く人も少なくありません。前述のように自分の「恥部」ともいうべき側面が他人に露わになった時、それにショックを受けたり対人関係を恐れるようになったりという人は少なくありません。
こうした「社交不安」は、友人関係や信頼できる人間関係の希薄化をさらに強め、社会とのつながりを失わせてしまいます。さらに、そうした社交不安の悪化は明確に「健康状態の悪化」にもつながっているという意見もあります。
ビタミンF(Friendshiip)
過去30~40年の研究によれば、社会参加に積極的で、親しい友人、人間関係が良好である人の健康状態は、そうでない人の健康状態とは大きな差があるようです。人間関係のストレスは大なり小なり誰しもが抱えているものですが、それが強まることによって生まれる孤立は、健康を害し多くの病気を誘発するリスクを伴うのだと。
友情というものが健康においてどれほど重要か、計り知れないほどの恩恵がある可能性は否定できません。海外ではビタミンF(Friendshiip)という言葉がありますが、決してジョークで済まされる言葉ではないのです。
一部データでは「人間関係の触れ合いは、日本円で1200万円ほどの金銭的価値がある」という結果もあります。健康的側面、幸福度において友人関係の有無の差は大きいと言わざるを得ないのです。
もちろん、友人関係が多いから良いというわけではなく、個々人に合ったスタイルはあります。ただ、人生を費やして「ある程度気兼ねなく腹を割って語り合える親友」を作る努力をしてみることには、少なからず意義がありそうです。
(文/多和田良平)