思考

選挙投票を決める「最初か最後」のインパクト…NHK党立花孝志氏はどこに入る?

発行責任者 (K.ono)

 7月には参院選挙が行われ、世間から大きな注目を集めています。

 昨年の衆院選では投票したい野党がいない……といった意見も多く、自民党に票が流れましたが、最初から投票する党や候補者を決めていた人、政策や意見を聞いて決めた人、悩みに悩んで最後に投票先を決めた人など、決め手もさまざまだったはずです。

「初頭効果」と「新近効果」

 有無を言わさずに投票先を決めていた人は別として、多くの人は何を基準にして投票先を選ぶのでしょうか。政治に詳しいなら具体的な政策面をしっかり吟味することも可能でしょうが、誰もが政治に詳しいわけでもなく、忙しい日々の中で投票所に向かうわけですから、数少ない印象や考えに触れる中で投票先を決めています。

 そして、そうした選択には何がしかの心理的な“トラップ”が潜んでいるものです。選挙での選択においてもそれは同じです。

 複数の意見や考えを聞いた上で選択をする際、重要視される考えが「初頭効果」と「新近効果」です。

 初頭効果は「最初に聞いた意見のほうが記憶に残りやすい」というもの。新近効果は逆に「最後に聞いた内容の印象が強く残る」作用です。

 人間は一連の話や意見の中で「最初と最後の話」が最も記憶に残ることがわかっています。こうした特徴を「順序効果」と呼び、初頭効果と新近効果はそれを分解した考えと言えるでしょう。

 例えばある人の紹介で「怒りっぽく、嫉妬深く、計算が得意で、勤勉で、知性が高い」とあったら、その人に好印象を抱かないのではないでしょうか。しかし逆に「知性が高く、勤勉で、計算が得意で、嫉妬深く、怒りっぽい」なら、前者とはだいぶ印象が異なるはずです。これはまさに初頭効果の影響です。

 新近効果の代表例は裁判でしょうか。弁護士や検事は法廷の闘いに勝つべく、「もっとも強力な証人を最後に用意する」傾向があるようです。判決を下す裁判官が話し合いをする直前に強い情報を出せば、判断に影響を及ぼす可能性も否定できません。

 では、冒頭の話に出た選挙は、初頭効果と新近効果のどちらが効力を発揮するのでしょうか。

重要なのは「いつ投票をするか」

 仮に各党の幹部が集まって大規模な公開討論会などに出席した場合、最初と最後にインパクトある発言をした人や党が印象に残るのは間違いありません。

 ただ実のところ、重要なのはそれを聞いた後「いつ投票をするか」なのです。

 もし投票が公開討論会の数日後ないし1週間後など、ある程度時間が空く場合は初頭効果が力を発揮します。これは脳の短期記憶が長期記憶に移行する中で、最初の記憶のほうが鮮明に残るからです。

 一方、公開討論会の当日、もしくは翌日すぐに投票をする場合には、短期記憶で強く印象に残っている「最後の話」がより強い影響を及ぼします。

 つまり得た情報をもとに行動を移す際、その“タイミング”によって順序効果の効力は変わるということです。選挙の場合、公開討論や党幹部が集まってのテレビ討論などは投票日から少し時間が空く場合も多いので「最初にインパクトを残す」ことが重要と言えるかもしれません。これがNHK党の立花孝志氏の「途中退場」に置き換えるとどうなのか……。

 具体的な物事や意見を比較し見極めることはもちろんですが、単純な“順序”や“タイミング”も私たちの判断に大きな影響を及ぼすということです。そうした心理的トラップを念頭に入れておくことは、案外有用かもしれません。
(文/堂島俊雄)