近年、芸能人や政治家、はたまたスポーツ選手まで、実にさまざまな人が不祥事等により謝罪している様子を頻繁に見るようになりました。ところが、同じ不祥事を起こしても、世間からの激励の声を集めてうまく復帰ができている人もいれば、処分が解けてからも、いつまでも悪く言われ続けている人もいるように感じられます。
要領の良さはどんな能力で決まる?
もちろん、それまでの振る舞いや発言、謝罪後の姿勢などの個人の行動による部分が、許されるか否かの大きな要因であるといえますが、実は社会的な「イメージ」によるところもあるのかもしれません。「あの人だったら仕方がない」、「あいつは許せない」そんな印象はなぜ植え付けられてしまうのでしょうか。
同じように、私たちの会社や学校においても、同じミスをしても「許される人」と「怒られる人」、そんな両者を見たことがあると思います。「要領のいい」という言葉で一般的には片づけられることもあるこの現象。実際にこの要領の良さはどのような能力で決まるのでしょう。心理学的には、この差を生み出す要因の一つに「確証バイアス(confirmation bias)」があるといわれているのです。
確証バイアスとは、「自分がそこに見出すだろうと予測しているものだけ」を都合よく認識してしまうという心理的な傾向を指すそう。例えば、ユーモアがあるという印象を抱いている人が、何かを発言すると「この人が言うことだからきっと面白い!」と無意識に認識してしまうのです。逆に同じ発言を頭がいいと認識している人が発したら「深い意味があるのではないか……」と解釈してしまう場合もあります。つまり私たちは「客観的な評価」を下しているつもりでも、実は「その人に対して勝手に抱いているイメージ」に強く引っ張られる生き物なのです。
つまり「許される人」と「怒られる人」の話も、その人が実際に何をしたかというよりは、「憎めないやつ」や「すぐミスをする」というイメージによる確証バイアスが大きく働いているといえるのかもしれません。
「初対面」の重要性
では、この確証バイアスにつながるその人の「イメージ」はいつ決まるのでしょうか?それはほとんどの確率で「初対面」であると考えられています。
心理学的にも、「最初にその人を観察したときに抱いた情報」が、その後の情報解釈にかなり大きな影響を及ぼすことが判明しており、これを「初頭効果」というそう。さらにこの初頭効果の厄介なところは、最初のイメージが誤りであったとしても、その後このイメージを塗り替えることは相当困難であるという点が挙げられます。
もし、イメージと違う行動や発言をしても、先に説明した認証バイアスの働きによって脳内で都合よく解釈してしまい、自分の抱くイメージにすり合わせてしまうといわれています。
しかし、一度作られてしまったイメージを後から変えることが難しいということは、逆にいえば、最初に自分のイメージを「かしこい」、「ユーモアがある」、「憎めない」といった理想の形を植え付けることができれば、その後は確証バイアスの働きによって、周りが勝手に都合よく解釈し続けてくれるということかもしれません。
心理学的にみて、「要領のいい人」は実はその人の能力以上に、「自分という人間がどう見られているか」というイメージの植え付け方がうまい人ではないのでしょうか。そう考えるなら、「自分は不器用だから……」、「初対面は人見知りをしてしまって苦手」と諦めてしまう前に、初対面時の相手に「自分がどう見えるか」が今後の人間関係において、いかに重要になるかということを強く意識してみましょう。すると、自ずと周りから愛されやすいキャラクターへと変身することができるかもしれません。
(文/愛知新太郎)