思考

コロナ禍で露呈「指数関数的増加」に人はついていけない…「%での増減」に鈍い

発行責任者 (K.ono)

 2020年から、新型コロナウィルスが世界中で蔓延し、世界の状況を大きく塗り替えました。

「指数関数」的な増加

 中国で初めて確認された新型コロナは、瞬く間に世界を埋め尽くしました。その爆発的な感染力は世界中を震撼させ大混乱に陥れました。ウィルスに関する正誤不明の情報がまき散らされる「インフォデミック」という言葉も出ましたが、最近でもワクチン接種後の死者数が話題になりました。こうした情報氾濫が、コロナ禍がいかに大きな混乱なのかを如実に表しています。

 こうした混乱の一端が、現在まで断続的に続く爆発的な感染者数の増加にあることは間違いないでしょう。数字が常に倍ずつ増えていくような「指数関数」的な増加に大きな恐怖を覚えたのです。

 もともと人間は指数関数対応の増加にはなかなか対応できないと言われています。それは「感覚的にわからない」という点が大きく、数字の増加に誤ったイメージを持つことも多々あるでしょう。

 例えば「0.1mmの紙を50回折りたたむとどのくらいの長さになるのか」という問いがあります。「何m、あっても何十mかな」と思う人が多いと思いますが、実際には「1億km」であり、地球から太陽の距離の2/3に匹敵するというのが正しい答えです。0.1mmの紙が1億km……簡単に想像できないことですが、それこそが人間の指数関数的増加に対する弱さを表しているのです。

 人間は古代から現在まで、生活の中で何かが爆発的に増える経験をすることがゼロとはいいませんが少ないため、指数関数的な増加には慣れていないところがあります。突然自分の持っている株や事業の売上が短期間に爆発的上昇を見せると、最初に嬉しさよりも戸惑いが出たりするものです。

「%での増減」にも鈍くなりがち

 指数関数に限らず、人間は「%での増減」にも感覚が鈍くなりがちです。仮に「失業率が0.2%上昇」と言われても、それがどれほど深刻なのかピンときません。個人生活に直接的なことでいうと、借金の利子などが分かりやすいでしょうか「利率が月5%」と聞けば大したこともないように見えますが、実際には積み重ねでとんでもない金額を支払うことになるとなかなか気づきません。

 人は複雑な数字を見ると何となくわからないまま「大したことはなさそう」という結論に至ることが少なくありません。自分の思い込みや経験による直感、都合のいい解釈に固着する「確証バイアス」に陥るのです。そしてこの確証バイアスと、指数関数や%の見落としの合わせ技が、大きなミスや失敗をもたらす危険性を増大させるのは間違いないでしょう。

 やや複雑な数字が出た場合には、自分の印象や感覚ではなくしっかりと計算するクセをつけることが、指数関数や%のワナに陥らない唯一の方法ではないでしょうか。

 コロナ禍の中で数字や割合を正確に見つめることの重要性が再確認されました。個々人の身を守るためにも、正確な数字を得る努力はすべきなのです。
(文/田中陽太郎)