この世には「ラッキー」な出来事が数多くあります。時にはそれが人生を大きく変える幸運もあれば、1日の気分がちょっと良くなるラッキーもあるでしょう。
人から得られるラッキー「おごり」
四つ葉のクローバーのように迷信的なものから数億円の宝くじまで世の中には幸運やラッキーが溢れています。もちろん、それと同じかそれ以上のアンラッキーもあるのも世知辛い現実ですが……。
しかし、一見ラッキーに思えることであっても、実はその先にアンラッキーが控えていることもあります。もしそれが「人からもたらされたラッキー」であれば特に……。
サラリーマンが大半の日本においては、人から得られるラッキーでよくあるのが「酒・食事のおごり」でしょうか。同僚や先輩後輩もあれば、男性が狙っている女性に対して食事をおごるなど、決して珍しいことではないはずです。
今回注目するのはおごる側はお金の使いすぎに注意……などということではなく、おごられる側の話です。
スイスの作家ロルフ・ドベリ氏の著作『Think right』(サンマーク出版)では、米国の心理学者ロバート・チャルディーニ氏が研究した「お返しの法則」について紹介しています。これは、人は何かをもらった際の「負い目」に耐えられないとしています。それはおごりでいえば「おごられた相手に対する負い目から、要望や命令を受け入れやすくなってしまう」傾向を指します。
まず何かを与え、その後得る――こうした心理トリックは営業や布教活動等で長きにわたり使われてきた手法といえます。それどころか人間だけでなく、オランウータンなど動物の間でも成り立つというのだから驚きです。
(最終的に)下心はバレる
それだけ「動物の本能」ともいうべきお返しの法則。だからこそ、わかりやすい例で酒をおごられる側も注意が必要です。その人が酒や食事をおごることで「お返し」を求めているとすれば、それはやさしさや誠意ではなく「戦略」ということになります。
おごってくれる相手が過度なお返しを求めてこない人物かどうかを見ること、おごられることによってギブアンドテイクを求められないかを判断しなければなりません。ただ、それを見抜くのは非常に難しいことではあります。いっそ「特段の理由もなく人からはおごられない」と自分の中で決めるのも自己防衛としては正しいといえるでしょう。
また、おごる側もギブアンドテイクを求めてはならないということです。最終的に得をするために大盤振る舞いをすると、おごった相手がそれに伴うお返しをしなかった場合、怒りに駆られてしまいます。結局のところ(最終的に)下心はバレるということです。
何か魂胆があっていい顔をすることが後々生むマイナスは小さくありません。だからこそ、きれいごとではありますが「相手と心を通わせる」心構えこそが正しいということになります。人の意見を聞き、尊重すること。おごるならその度量とセットでなくてはなりません。そういう意味では、過度に人との距離感を近づけすぎないことも大事といえそうです。
今回は「おごりのリスク」という形でこの話を紹介しましたが、軽い気持ちで与えたり受けたりする行為は他にも数多くあります。「一見ラッキーに思えることであっても、実はその先にアンラッキーが控えていることもある」ことを肝に銘じたいところです。
(文/堂島俊雄)