思考

岸田文雄首相も同じ「計画がうまくいかない」理由…希望的観測のワナ

発行責任者 (K.ono)

 昨年、第100代の内閣総理大臣に就任した岸田文雄首相。

「計画」の大半はうまくいかない

 岸田首相は「新しい資本主義」「デジタル田園都市構想」「人生100年時代の不安解消」などを打ち出し、実現に向けて邁進すると語っています。実際に会議を立ち上げたり、新たな戦略への気持ちは強いようです。

 しかし、そうした「計画」も大半はうまくいかないのでは、と思っている人が多いのも事実でしょう。それは岸田首相が安倍晋三氏、麻生太郎氏、甘利明氏の「3A」の影響力が強い「傀儡政権疑惑」があるからという話ではなく、そもそも計画というのはなかなか予定通りにはいかないものと理解しているからです。

 一方で、なぜこうも計画は予定通り進まないものなのか、と考えたことはないでしょうか。多くの人は仕事のプロジェクトや家計の貯蓄、1日のスケジュールなど、短期にしろ長期にしろ多くの計画を立てます。人生を何十年も生きている中で無数の計画を組んでおり、少なくともその経験値は十分に積み重なっているはずです。

 しかし、どれだけ経験を積んでも、立てた計画通りに物事が終わることはなかなかありません。なぜなら人は自然と「楽観的に計画する」癖があるからです。ノーベル経済学賞を受賞した米ダニエル・カーネマンはこれを「計画錯誤」と名付けています。

 どれだけ計画立案と計画通りにいかない状況を経験しても「今回は計画通りにいくのでは」と考えてしまうのが人情というもの。

 楽観の中身もいくつかあります。住宅の建設やローン、仕事のプロジェクトを考える場合では「時間を楽観的に見積もり、それができることのメリットを過大評価」し「それにかかるコストとリスクは過小評価」する傾向にあります。

「希望的観測」に寄りかかって

 生活費を考える時に積みあがる貯金のイメージは楽観的に浮かぶのですが、かかるコストにはさほど頓着なく「大丈夫」としてしまいます。結果、思いの外貯金ができないことに愕然とした経験がある人もいるでしょう。

 これは「そうあってほしい」という願望、つまりは「希望的観測」に寄りかかってしまい、シビアにファクトを積み上げることができない(したくない)ことから生じます。

 一方、プロジェクトや計画そのものは、ある程度のリスクも見越してしっかりと組み立てられる人もいるはずです。実際に予定通り終わらせた経験がある人もそれなりにいるのではないでしょうか。

 しかし、それは計画があくまでも「内的要因のトラブル」で済んだ場合のみです。例えばスタッフの入れ替えや余計に費用がかかる可能性などはある程度見越すことも可能でしょう。

 ただ「外要因」となるとそうはいきません。建物の計画では天候や地震などの自然災害の影響を否応なく受けてしまいますし、家計の話であれば思わぬ交通事故や子どもの病気など、あらゆる計画は「予想が不可能な出来事(ブラック・スワン)」の影響も多分に受けてしまいます。

 ブラック・スワンを避けるのは極めて困難ではあります。多くの飲食店やフードチェーンが新型コロナウィルスを予想できるはずもなく、大ダメージを被る結果を避けることは不可能だったに違いありません。

 こうした事態をできるだけ避けるため「死亡前死因分析」をすべきと、スイスの作家ロルフ・ドベリの著書『Think Smart』(サンマーク出版)では記されています。これは計画が予定通りにいかないどころか、ちゃぶ台ごとなくなるような失敗(死亡)をする理由(死因)を、計画を実行する前にできる限り考えるということです。

 全く考えたこともなかったブラック・スワンが起こる世の中。そもそも計画が不確かなもので、さまざまなパターンや失敗予測を用意しておくべきということでしょう。岸田首相の公約実現が厳しい道のりになるのも当然なのです。
(文/谷口譲二)