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ジャニー喜多川、市川猿之助…「閉鎖空間の闇」芸能界の特殊領域で次々と問題が浮上する事態は異常か、それとも「漂白社会」の必然か

発行責任者 (K.ono)

 芸能界は「閉鎖空間」と言われることも多い。

どこまでもその“常識”が変わらない領域

 容姿やセンスに恵まれた老若男女が独自のルールを守りながら浮き沈みの激しい人気商売の世界で戦っている。ある意味では世間一般のサラリーマン社会よりも数段厳しく、時にその裏側が表に出た時の拒否反応が尋常ならざるほど、世間の常識とかけ離れている場合も多い。

 だが、最近では芸能界もコンプライアンス等を求められるようになり、裏側はともかくとして事務所、タレントともに非常識な慣習も徐々に目減りはしているようだ。SNS全盛の現在、そうしないと生き残れないという側面も多分にあるだろう。

 その前提の上で、どこまでもその“常識”が変わらない領域もある。それが、現在話題になっているジャニーズ事務所であり、歌舞伎界である。

 ジャニーズ事務所は美少年たちを集めアイドルユニットを作り、社長であるジャニー喜多川氏のセンスもあって芸能界、メディア界でいまだ絶対的な地位にある。他の芸能事務所などとは比較にならない「打率」と固定ファンを有しており、ここまで影響力があると起用する側が忖度をしたり逆らえないのはある意味必然と言える。

 だからこそ、今問題とされているジャニー氏の「性加害問題」が表に出てきた事実は、そんな「触れてはならない領域」に時代の手が届いたということを証明している。そもそもジャニーズ事務所を辞めるタレントが増えたせいで事務所のパワーが弱まり、SNSはさらに成長するという反比例の状況が生まれたこと、芸能界に清廉潔白を求める漂白された社会を望む世間の感情が合いまった結果である。そして、テレビを中心にしたメディアもそれを無視できなくなった。

市川猿之助氏が、両親とともに自宅で倒れているところを発見

 また、18日には歌舞伎俳優の市川猿之助氏が、両親とともに自宅で倒れているところを発見された。父の市川段四郎氏と母は亡くなり、猿之助氏だけが一命をとりとめたという。

 衝撃的なニュースだが、この出来事の前に、猿之助氏の「セクハラ・パワハラ報道」が週刊誌から出された点は見逃せない。猿之助氏は地方公演などで共演者(おそらく男性)に性的なハラスメントを繰り返していたとのことで、一部ではかなり問題視されていたようだ。

 その直後のこの出来事だけに、関連性を考えざるを得ない部分はある。セクハラ自体がショックだったのか、性的嗜好の露見に衝撃を受けたのか、あるいは別の何かかは定かではないが、いずれにせよ「無理心中までするのか」という意見も多い。

 人の価値観はそれぞれではあるものの、ここには歌舞伎界の問題もあるだろう。「伝統」の名のもとに優遇され、チヤホヤされ、指摘や苦言を呈してくれる人はおらず「遊びは芸の肥やし」をいまだ実践している事実は、世間からすれば疑問だ。だが、それこそが閉鎖空間だからこそ起こってしまう思考のズレだろう。

「JKT」が崩れる世の中で

 芸能界には「JKT」という言葉がある。Jはジャニーズ、Kは歌舞伎、Tは宝塚歌劇団だ。いずれも絶対的なファン層に支えられ、世間の地位は高く、伝統があり、メディア界隈に強い。宝塚においても先日、パワハラ問題が取り上げられた。

 ここへ来てバラバラとこのJKTから問題が出てきたのは偶然ではないだろう。芸能界というよりも社会が大きく変わってきたということだ。

 変化できないものは生き残れない。ある意味で自然の摂理なのだが、何十年も全く揺るがなかった領域にヒビが入ったのは、世の中全体が優しくなくなったせいもあるのか、それとも当然の正しい方法なのか……まだその答えは出ない。
(文/石田蓮)