※画像は「Nadaraikon」
25日に阪神競馬場で開催された宝塚記念(G1)は、1番人気イクイノックス(牡4)が苦しみながらも勝利を掴んだ。
イクイノックスを意識していた武豊
道中後方、大外を回しての苦しい展開となったが、最後の最後に末脚炸裂。世界を制した脚でライバルをねじ伏せてみせた。
単勝1.3倍という期待を背負っての勝利。ライバルたちもイクイノックスとC.ルメール騎手がどんなレースをするのかに神経を集中させていたに違いない。
そしてその中でも、もっともイクイノックスを意識していたのが武豊騎手かもしれない。
武豊騎手は、昨年のエリザベス女王杯を制したジェラルディーナに騎乗。もとは団野大成騎手の予定だったが、急遽の乗り替わりとなった。巡ってきたチャンスに武豊騎手も強い意気込みがあったはずだ。
レースでは後方、イクイノックスの直前につける。これまでのジェラルディーナと同じく、最後の直線の末脚に懸ける戦法かと思われた。
しかし、向こう正面で武豊騎手が仕掛ける。
ジェラルディーナの気持ちを優先
ジェラルディーナは一気にポジションを押し上げ、3角の時点では4番ほどにつけた。これは明らかにイクイノックスを意識したレースと言えるだろう。
武豊騎手は「後方からの競馬は想定内。ただ、3角でハミを取ったので無理をせずに押し上げていった」とした。
「イクイノックスは、昨年の有馬記念のように捲りを展開、ジェラルディーナも最後に末脚を伸ばして3着にはなったものの、1着とは大きな差がありました。イクイノックスを倒すため、脚を多少使ってでも先んじて仕掛けたのは悪くない動きだったとは思います」(競馬ライター)
ジェラルディーナの気持ちを優先した武豊騎手。結果的に「勝負手」になりレース盛り上がった。
しかし、このタイミングでの動きを活かしたのが、イクイノックスだった。
ルメール騎手も合図を出して…
「JRAのジョッキーカメラ映像を見ればわかりますが、ジェラルディーナが動き出すと同時にイクイノックスにC.ルメール騎手も合図を出して少しずつ押し上げています。ルメール騎手は武豊騎手の体内時計を信用しているということでしょう。結果は優勝ですから、良い選択だったと思います。
ジェラルディーナは最後に脚が止まって4着。惜しかったですが、レース展開を考えるといつも通り後方のレースをしたら順位が上ということもあったかもしれません。ただ、それは結果論。武豊騎手のレースぶりが宝塚記念を盛り上げた事実もありますね」(同)
極めて細かな駆け引きが行われた、見ごたえのあるレースだった。
(文/山田倫)