生活

酒、ギャンブルは「辞めても悪影響」? 現在志向バイアスの移り変わりとは

発行責任者 (K.ono)

 酒、たばこ、ギャンブルなど、人の趣味嗜好の中には「依存性」の強いものも少なくありません

 最初にあげた3つの嗜好に関しては、健康、トラブル、金銭的負担などさまざまなマイナス要因があり、健康意識や節約意識が高まった現代では“嫌われ者”のポジションにいます。

趣味をやめるだけでは“本当の問題”は解決しない

 とはいえ、1日における一服の清涼剤、ストレスが溜まった1日のリフレッシュ、休日の楽しみといったリラックスとしてこれらの趣味を楽しむ人もいるはずです。問題なのは、やりすぎて健康を害したり気が付いたら多額の金銭を失うといったことです。酒、たばこ、ギャンブルは依存度が高いため、そうなってしまう可能性は確かに高いですが……。

 ただ、そうした趣味を無理くりやめることが解決につながるわけではない……そんな主張もあります。『9割の買い物は不要である』(秀和システム)の著者であるマーケティングディレクターの橋本之克氏は、単に自分の趣味をやめるだけでは“本当の問題”は解決しないとしています。

 橋本氏は、酒やたばこが健康に悪いと思いながら楽しんでしまうのは、認知科学、行動経済学でいうところの「現在志向バイアス」が働いていると指摘します。これは(未来の)健康やたばこ購入で積み重なる(未来の)金銭的負担よりも、目の前にある事柄の価値を重要視してしまう傾向を指します。

 これはなかなか「気づきづらい脳の動き」であり、いつの間にか健康やお財布に負担がいっている場合も多いのが実情と言えるでしょう。

最大の問題「自分でコントロールできない散財」

 だからといってこうした趣味をやめればいい、と橋本氏は結論づけているわけではありません。むしろ現代のストレスの多さを考えれば、例えばたばこをやめたせいでストレスが余計に溜まり、代わりにソーシャルゲームに必要以上に課金したり、ギャンブルに走ってしまったり、酒を大量に飲むようになってしまえば本末転倒、それどころか状況が悪化する可能性すらあります。現在志向バイアスが別の対象に移るだけで、根本的な問題解決には至っていないということです。

 橋本氏は「自分でコントロールできない散財」こそが最大の問題としています。つまり、現在志向バイアスに支配され、その場の消費にのみ注目してしまう状態を問題視すべきということです。

 最近はインフルエンサーやオンラインサロンの「教祖」のような人が「今に集中する」ことの重要性を説く場合が多いですが、ある程度先を見越すのも“自制心”として大切なのは間違いないでしょう。目の前のものをただ追いかけているだけでは、野生動物と変わりがありません。

 酒もたばこもギャンブルもソシャゲもほどほどに、よく考えて……それができれば苦労しないよ! という声もありそうですが、自分の嗜好が「現在志向バイアス」に陥っていないか、一度立ち止まって考えてみるのもアリかもしれません。
(文/堂島俊雄)