思考

行動経済学とは? 人は決して「合理的」ではないことを証明?

発行責任者 (K.ono)

 2021年は、前年から続く新型コロナウィルスの蔓延や無観客開催となった東京五輪など、混沌が続いた1年でした。

人間は合理的か否か

 コロナ禍において業績を伸ばす大企業や業界もあれば、政府の締め付けによって大ダメージを受け続けた飲食業界など状況はさまざまであり、多くの人がこれまで以上に「世の中の不透明さ」を実感しているのではないでしょうか。

 不透明だからこそ堅実に、合理的に経済的な安定や上昇を目指そうとする人もいるかもしれません。自分の利益を少しでも増やすために自制し、合理的に行動するのを否定することはできません。

 人間は常に利益を最大化させるために合理的な行動をする、それは経済学でも伝統的な根本原理です。

 しかし、人間そこまで合理的になれるものでしょうか。読んだ方も「決してそんなことはない」と思う人が多いのではないでしょうか。

 実際、人間は合理性だけで動いているわけではありません。収入を考えたら自制したほうがいいのに高い外食に行ったり、テスト勉強をすべき時期に友達と遊んでしまったり……そうした非合理的な選択は日常に満ちているでしょう。そうした行動は経済学の原理では測れない領域です。

 非合理的な行動には「ついついやってしまう」こともあれば、「正しい選択と思ったのに、実は非合理的な行動だった」など、状況や種類も細分化されてしまいます。

 また、日本が資本主義、自由競争の社会であることを考えれば「自分の利益さえよければいい」と、他者を蹴落とす論理が正当化されます。強い合理性、強い自制、そして強い利己という3つの行動原理から意志決定する人間は「ホモ・エコノミカス(経済人)」と定義されています。

 しかし、他者を思い行動する人もいますし、合理的でも自制的といえない微妙な行動も数多くあるでしょう。芸能人でよく騒がれる不倫なども、発覚した際の経済的ダメージを考えれば自制するはずですが、こうしたスキャンダルがなくなることはありません。

人間の実際の行動から経済を読み解く

 そんな中で生まれたのが、経済学に心理学の考えを足した「行動経済学」です。ほどよい合理性とストレスの溜まらない程度の自制、そして自分を大事にしつつも他者を思いやる利己という、本来の人間の“いい加減さ”に着目した考え方です。人間の実際の行動から経済を読み解き、ホモ・エコノミカスと矛盾するような行動をとる点に注目をするということです。

 行動経済学は1970年頃に生まれた比較的新しい学問ですが「近代マーケティングの父」といわれるフィリップ・コトラーや、『ファスト&スロー』(早川書房)で有名なダニエル・カーネマンをはじめ複数のノーベル賞受賞者も生むなど知名度は非常に高いです。

「行動経済学マーケティングの別称」というのはコトラーの言葉ですが、今の消費者やビジネスに密接にかかわる理論であり、サラリーマンや企業経営者、イチ消費者としても理解して損がない学問です。

 合理性のみの経済学だと数字が苦手な人は及び腰になってしまう部分もあるかもしれませんが、行動心理と経済学のシンクロした行動経済学は、とっかかりはつけやすいでしょう。

 コロナ禍もあり不透明な昨今、個々人の停滞した状況を打破するヒント行動経済学にはあるように思います。読みやすいオススメの本を以下の出典に紹介させていただきます。
(文/堂島俊雄)