思考

対人関係「3つのタイプ」人間の性質は「子ども時代の親」が強影響?

発行責任者 (K.ono)

「すべての悩みは対人関係の悩みである」とは、精神科医であり心理学者であるアルフレッド・アドラーの言葉ですが、学校や職場、家庭、地域など、さまざまな場面で人間関係に悩んできたという人は多いでしょう。

つながり(愛着)に3つのタイプ

 単純に誰かとケンカしたというものもありますし、友達だと思っていた人に裏切られた、孤独を感じる、人付き合いが面倒くさい、マウントをとってきて気分が悪いなどなど、挙げ始めるとキリがありません。

 そして大抵の場合、対人関係に悩みがちな人は、どのコミュニティにおいても居心地が悪く、よい人間関係が構築できない傾向があるのではないでしょうか。そして反対に、誰とでも打ち解けられる人、コミュニケーション能力が高い人というのは、大抵のコミュニティにおいてあまり悩みがないように見えます。

 対人関係におけるスタイルは、実は子ども時代に作られます。心理学者のジョン・ボウルビィは、子どもの発達研究の分野で重要な貢献をした学者ですが、「子どもと親(およびその他の養育者)のつながり(愛着)に三つのタイプがあることを指摘している」と、ハイディ・グラント・ハルヴァーソンの著書『だれもわかってくれない 傷つかないための心理学』(早川書房)に記されています。

 つまり、子ども時代に満たされなかった親との関係を礎にしているため、その時に学んだことを大人になっても引きずっているのです。

 三つのスタイルとは、親が子どものニーズによく応じている場合の「安定型の愛着」、親の愛情を感じられないわけではないけれど、それがあてにならないと感じている場合の「不安型の愛着」、親が常に子どものニーズに応えず、自分に愛情や関心を向ける気がないことを悟った時の「回避型の愛着」です。

 ご想像の通り、安定型の愛着を持つ場合には柔軟で健全な対人関係を築くことができますが、不安型の愛着や回避型の愛着を持つ場合には、人間関係に悩むことが多いのです。

「いつ相手が手を放してくるか分からない」

 そして厄介なことに、不安型も回避型も親のネグレクトの産物ではあるのですが、児童福祉事務所などが子どもを保護しなければならないようなレベルのネグレクトではないのです。

 はたから見ればこの子どもたちは普通に暮らしていて、食事や衣服もきちんと与えられ、ちゃんと家もあります。足りないのは目に見えない、親からの関心と心のサポートというわけです。

 ではこういった人たちに対して、どのように応対したらいいのでしょうか。不安型の愛着を持つ人が相手なら、共感したり、不明瞭な態度を避けたりすることを意識しましょう。

 彼らは「いつ相手が手を放してくるか分からない」と不安の感情を持っています。つまり、共感していることや、自分の考えや価値観をはっきり伝えることで、おぼろげだった相手の感情がはっきり見え、安心感を覚えます。そして心を開いてくれるでしょう。

 回避型の愛着を持つ人なら、相手に対する期待値を低めにしておくことが重要です。彼らは既に「誰にも頼らず、ひとりで生きていく」と心に決めているので、例え誰かに好意的に接してもらったとしても同じ反応を返すことはできません。

 忍耐力が必要ですが、「自分がこんなに友好的に接しているのに、全然心を開いてくれない」と決めつけないことです。親密さを押し付けず、相手のペースに任せることが、二元関係の一つの突破口になるかもしれません。
(文/名古屋譲二)