恋多き女、と言われる人がいます。
一般的に「男の恋は別名保存、女の恋は上書き保存」などと言われますが、恋多き女と呼ばれている人は、誰かと別れてもすぐ別の誰かと次のお付き合いをスタートさせ、前の恋はまるでなかったかのように進行形の恋に夢中になる姿に、「あれだけ夢中になっていた彼氏と別れてすぐなのに、もう!?」と、時折周りが戸惑うほどです。
「恋愛体質の人は結婚したって恋愛をしますよ」
そんな恋愛体質の女性でも、案外あっさり結婚します。それこそ周りが拍子抜けするほどに。彼女の結婚について、周りはこう思うはずです。「年貢の納め時か」と。
しかし、そういった女性は結婚しただけで、ガラリと一変するものでしょうか。社会学者でフェミニストの上野千鶴子さんは、ある結婚式場で「最後の恋が始まる」というキャッチコピーが書かれたポスターを見たそうです。
それを見た上野さんは「ウソでしょう」と思ったと、亀山早苗さんの著書「人はなぜ不倫をするのか」(SBクリエイティブ)で答えています。「恋愛体質の人は結婚したって恋愛をしますよ」と上野さん。
そう言い切るのはやや乱暴な気もしますが、実際に不倫をする人がいるということは、そういうことなのかもしれません。
「婚外恋愛をしているから夫に優しくなった」という女性がいるそうです。さぞや気が咎めて、後ろめたさからか……と思いきや、罪の意識からではないと言うのだとか。
男性からすると、背筋に冷たいものを感じるかもしれません。いっそ罪の意識であってくれ、と言いたくなるでしょう。しかしながら、そんな女性たちは男性から愛して愛されて“女度”が上がり、満たされて夫にも優しくできるのだそうです。
さらに「男性は鈍感だから、妻の婚外恋愛には気づかない」と語る上野さんは、その理由をこう分析しています。「少々疑わしいと思っても、不都合な真実は知りたくない生き物だから追及しないんです」。
男性、つまり夫側からすると、自分の妻に少し怪しいと思う点があったとします。でもまさか、不倫なんて大それたことをするわけがない、そう思い込みたいのです。
なんだかいつもと様子が違うし、生き生きしているような気もする。やたら自分に優しい。しかも最近きれいになったような気もするし、スマートフォンをよく見るようになった。どう見ても怪しい。でも、怪しい=クロ確定ではない。
「恋愛と結婚は別だからね」
だってうちの妻が?不倫?そんな大それたことするわけない…とグルグル回り振出しに戻り、「まさかうちの妻が、ね」と強引に自分の都合の良いように結論づけてしまうのでしょう。「もしかすると、単に奥さんは優しくなっただけなのかな」と。
ところで今の日本の社会では、恋愛結婚、つまり、お互いが恋をしてお付き合いが始まり、その後結婚まで至る、という結婚のスタイルが主流といっていいでしょう。
しかし、「恋愛と結婚は別だからね」という、既婚者のセリフを聞いたことがないでしょうか。しかも特に夫婦関係が悪化しているわけでもなく、家庭がすごく円満だという場合でもそう語る人はいます。
恋愛という浮足立った感情を超えて、夫との間に家族としての「情」が生まれるのは、それほど悪いことではない、むしろ夫婦関係が熟してきたからこその成果だと言えるでしょう。
しかし、「夫に“情”はあるが、“愛”はない」「夫は家族だから、家族とセックスしようと思わない」と断言した女性もいるのだとか。
しかし、女性による不倫の上に成り立つ円満な夫婦関係・家庭とは一体何なのだろう、と思ってしまいます。本当に女性の不倫はバレていないのでしょうか。密かに疑われている夫婦関係は本当に円満と言えるのでしょうか。
「妻」「母」そして「女」。この使い分けを完璧にこなせている人は、実はゼロなのではないでしょうか。なぜなら人間は、完璧とは無縁の生きものだと思うからです。
(文/名古屋譲二)